エピソード1)
10月9日 さわやかな澄みわたった秋晴れの日、今期最後の稲刈りをした。品種は、私の好きな「日本晴」である。本当にすがすがしい日本晴の一日、コンバインで刈取り作業をしながら、十数年前の事を思い出していた。それは、JAの理事をしていた頃、稲刈り作業など全部終った10月下旬理事会に出席した。その日は雲一つ無い、さわやかな秋晴れの日、正に日本晴の日だった。開会前のひと時、窓ぎわに立って、秋晴れの外の風景を眺めていた。そんな時、私と同年のO君が、そばに来て、同じく秋晴れの外を眺めながら「オイ、田んぼ狩り(稲刈)したくなったナァ」とつぶやいた。私も同じ事を思っていた。共に顔を見合わせて「ニヤッ」と笑っていた。O君は稲作専業農家である。私は稲作と酪農の兼業農家である。お互い農業以外でも、相通じるものがある。
エピソード2)
毎年、高額納税者として県内で上位を維持している経済界のIさんと、ある会合で出会い雑談の中でIさんは私に「農業について色々な情報を聞いていると、仲々大変だが君は農業をやって行きますかね?」と尋ねられた。私は少し言葉につまったが「僕は田んぼが好きなんです」と答えた。Iさんは黙っていた。私はIさんの気分を損ねたかなと少し気になった。その後、またIさんと会合で相席し私のそばに来て「田んぼが好きなんです」と言う言葉に感動したようである。私は「いや、どうも」と意味のない返事をしていた。今もIさんの感動したと言う言葉が忘れられない。