先日、北海道の町村農場の血統を引く乳牛を導入することが出来た。昭和45年、第5回全日本ホルスタイン共進会が愛知県豊橋市で開催され、私は福井県代表として初めて愛牛を出品した。開会式を直前に控えた時、北海道の町村末吉氏が北海道の出品者40余名に「開会式に遅れない様に駆け足で行こう」と呼びかけて走って行った。全国の酪農家の憧れの日本を代表する町村農場主である。その時が、町村末吉氏との初めての出会いであった。
町村農場の先代は福井県武生地区出身で、今も先祖の墓があると聞く。末吉氏は町村家に婿養子に迎えられ、先祖は大野地区出身との事である。それから十数年後、福井県の乳牛の審査に日本ホルスタイン協会の山本善彦審査長が来県された。その時、私は懇親の席を設け酒くみ交わしながら乳牛改良の話に花が咲いた。第5回全ホ共の時、審査の補助員として参加していたそうである。そのとき町村農場の末吉氏の話が出た。山本氏は「町村農場は日本一の牧場で、日本酪農の指導者としてもトップレベルの農場であり農場主の末吉氏の人格に尊敬している」と言われた。ある時、北海道で1頭あたり産乳量の多い酪農家での研修会に町村末吉氏も出席され熱心にメモをとる謙虚な人間性と、その姿勢に非常に感動したと言われた。後日、私は町村末吉氏に電話し、福井県家畜改良協会の総会に講師として「町村農場のあゆみ」を講演してもらった。
町村末吉氏の学ぶ姿勢と、剣豪の宮本武蔵の格言「我以外すべて師」の言葉を噛み締めている。